新潟地方裁判所柏崎支部 昭和24年(ワ)11号 判決
原告 山崎熊太郎
被告 高橋卯作
一、主 文
一、原告は被告所有の刈羽郡内郷村大字別山字後谷六千二百九番、田七歩並に同所六千二百七番図面一、二の示すごとく、畑十四歩の地内に
目的 飲料用水引水
範囲 幅一尺二寸高さ四尺位奥行二十間の横穴を設け坑口から北に向つて四間の地点までは幅二間、此の地点から川の南側端に至るまでは幅二、四七尺(別紙<省略>図面一、二、三赤線の通り)
要役地 刈羽郡内郷村大字別山六千二百三十一番宅地二十六坪二合五勺並に同所六千二百三十二番宅地百三十八坪
の地役権を有することを確認する。
二、被告は原告が前記引水のため修理工事を施行することを認容せよ。
訴訟費用は被告の負担とする。
二、事 実
原告訴訟代理人は、主文第一第二記載のとおり及び訴訟費用は被告の負担とするという判決を求め、その請求の原因として
一、原告は本件要役地刈羽郡内郷村大字別山字後谷六千二百三十一番宅地及同所六千二百三十二番宅地及その地上の建物を所有し居住して居るもので、被告は承役地の同所六千二百七番、畑十四歩、同所六千二百九番、田七歩を所有して居るものである。
二、前記承役地及要役地原告居住の建物は共に明治三十年十一月二日以降訴外亡松木松栄が所有し、主文掲記の個所範囲に飲料水を得る爲め引水設備をして居たが、昭和二年六月十五日同人から訴外松木藤太郎に移轉し、更に同人から昭和二年七月十六日本件承役地の方は被告に移轉し、要役地及共の地上の建物の方も、同日原告及訴外池田新藏、同高橋宗次等三名の共有となり其の際原告に対し、本件の地役権の設定行爲をなした。昭和十九年十月二日からは原告は持分の分割として本件要役地を引水権と共に原告の單独所有となつて今日に至つたものである。
三、被告は昭和二年七月十六日本件承役地の所有権を取得して以來原告の引水権に対し承役地として認容して來たのであるが、昭和二十四年七月頃原告が右引水に故障が生じ、引水が汚濁して飲用出來なくなつたので引水施設の修理をしようとした処、之を妨げたのである。
之を要するに前記訴外亡松木松栄が引水の施設を爲し、松木藤太郎の所有に移つた用水地役権として対外的に表現されたものであるが、少くとも原告は昭和二年七月十六日訴外松木藤太郎より前記の通り讓受けた際、同人との間に設定行爲を以て本件地役権を取得したもので、被告は同人より承役地を讓受け、其の義務を承継したものである。仮に本件地役権設定行爲がなかつたとしても、昭和二年七月十六日から起算して、十年の経過の時効により取得したものであると述べた。
被告訴訟代理人は請求棄却の判決を求め、答弁として、原告主張の事実記載中一、二、三の事実は之を認むるが、余は否認すると述べた。
<立証省略>
三、理 由
判示の第一、二、三記載の事実は本件地役権の設定行爲を除き当事者間に爭いなきところである。そこで本件地役権の設定行爲があつたかどうかに付判断するに、原告援用の証拠は勿論、全証拠を以ても之を認むることは出來ない。然し次に原告主張の時効取得の点に付判断するに、証人高橋宗次、松木ヨリ、山崎ワカ、安達源太郎の証言及原告本人の供述の結果、檢証の結果を総合すれば、本件承役地要役地は、明治三十年十月二日以降訴外亡松木松榮が所有して居た頃から同人が飲料水に使用する爲横穴を穿ちて引水して居たこと、其の後、同人が昭和二年六月十五日訴外松木藤太郎に讓渡し、更に同人より昭和二年七月十六日本件承役地を被告に、要役地を原告及池田新藏、高橋宗次等三人の共有に賣渡した際も、前記引水は現在のまま何等故障なく之を承認し、其の後昭和十九年十月二日原告の單独所有となつてからも引続き善意表現に引水し、承役地の所有者被告も何等異議なく、原告は善意に平穩且公然、且継続表現して占有使用し今日に至つたことを認むるに十分である。尚承役地の被告の所有は名義丈であると主張するが措信し難く、且第三者に対抗し得ざるものである。
果してしからば、原告は昭和二年七月十六日より起算し二十年を経過した時本件地役権を取得したことを認むることが出來るから、原告の本訴請求は理由あるを以て之を認容し、訴訟費用の負担に付、民事訴訟法第八十九條を適用して主文の如く判決する。
(裁判官 武田益蔵)